EVM: Earned Value Management

EVM(Earned Value Management)とは

プロジェクトの進行状況を、スケジュールとコストの面から指標を用いてモニタリング・予測するためのツール。

核となる考え方は、 スケジュールと進捗をコスト換算 することにある。

用語

  • EV: Earned Value 出来高。「完了済み作業に対する予算コスト」。進捗率とは関係あるが、進捗率そのものではない。
  • AC: Actual Cost 実コスト。「その時点の累積コスト」。
  • PV: Planed Value 期間予算。「その時点の完了予定作業に対する予算コスト」。
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失敗の本質 日本軍の組織論的研究

失敗の本質 日本軍の組織論的研究 は、戸部良一野中郁次郎らによる、大東亜戦争*1 における日本軍の戦い方を分析・反省し、教訓を抽出した本です。 本書冒頭で語られていますが、本書は純然たる戦史研究の本ではないです*2 。また、大本営レベル = 政治レベルの話も扱いません。つまり、「日本がなぜ負けると分かっている戦争に突入したのか」的な内容を扱いません。そうではなく、 日本軍の戦い方のどこが適切でなかったか について取り扱っています。

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構成としては3章構成になっています。1章では大東亜戦争における代表的な戦い(ノモンハン事件*3ミッドウェー海戦ガダルカナル島の戦いインパール作戦レイテ沖海戦沖縄戦) について取り上げ、1つ1つの戦況を外観して分析を行っています。2章ではこれらの戦いの分析を横断的に捉え、共通する教訓について抽出しています。3章ではその教訓を組織論的に一般化し、今日の我々が活用できるようにまとめています。

余談ですが・・・本書はAudible版で14時間を超える結構なボリュームがある本で、せっかく読んだのでTwitterで色々と呟いてみたら、「猫町倶楽部というところが主催している読書会があって、本書を取り上げるよ」ということを教えてもらいました。なのでそれきっかけで本書の読書会にも参加してみました。 読書会に参加したのは本記事を書いた前後ですので、そこで色々と思考が整理された部分もありました。(記事には反映できてない部分も結構あるけど)

さて、以下では私が本書を読んだ感想について書いてみます。読書感想文なのでネタバレ含みます。

*1:本書中の表記に従う

*2:純然たる戦史研究の本を読んだことがないので本当かは知りません

*3:一般的には大東亜戦争に含まれないものの、いくつかの重要な教訓を含んでおりその後の反省とつながっている

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FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣は、スウェーデンの医師ハンス・ロスリング氏とその息子・息子の妻によって書かれ、2019年に日本語版が出版された書籍です。2019年のビジネス書では、トップクラスに売れた本らしいです。本書は系統で言うと教養系で、ビジネス本に分類されますが自己啓発系ではないです。

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Youtube大学やサラタメさんなど、有名な本紹介系Youtubeでも取り上げられているので、内容を知っているという方もいるかもしれません。Youtube大学のそれは、結構よくまとまっていたと思うので興味がある方は見てみるといいと思います。(それよりも本書そのものを読む方がいいと思いますけど)

youtu.be

youtu.be

本書はかなりおすすめというか、全人類読んだ方がいい系の本です。教養系と言いましたが、現代を生きる我々にとって実践的な知恵を授けてくれる貴重な本だと思っています。このあと具体的に紹介します。

世界について知らなさすぎる

メインテーマは、サブタイトルそのまんま「10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣」なのですが、なんのこっちゃわからないと思うので ベタですが本書冒頭にある「つかみ」を紹介してみます。

3択クイズ

まず、人々がいかに世界の現状について正しく理解していないかを明らかにするために、いくつかの簡単な3択クイズを出してきます。 そのうち2問紹介しますので、挑戦してみましょう。(抜粋なので番号はとびとび)

質問1. 現在、低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を修了するでしょう?
A 20%
B 40%
C 60%

質問9. 世界中の1歳児の中で、なんらかの病気に対して予防接種を受けている子供はどのくらいいるでしょう?
A 20%
B 50%
C 80%

答えは、質問1がC、質問9がCです。あーそうなんだ、まあそんな統計知らないしな、という感想かもしれません。 ちなみにスウェーデンでの質問1の正答率は11%、質問9の正答率は21%でした。ひっく!ランダムに選んだよりも悪かった。

社会全体の知識不足

この3択クイズの正答率、一般の人の正答率が低いだけなら「知識が全然浸透してないんだねー」で終わる(終わらないけど)問題なのですが、 なんと一般とは言えないエリートの人たちでも、同様の正解率でした。ある世界の10大銀行の一つでは、質問1で選択肢A(20%)を選んだ人の割合は85%にも及びます。同じ答えを選んだ人は、ダボス会議で62%、スイスの開発支援の会議で50%もいました。

社会は思っているよりも悪くない

先ほどの3択クイズをランダムに選んだのだとしたら、正答率は33%くらいになるはず。それなのに、やたら選択肢Aを選んだ人が多かったのには、人々の間に何か 致命的な勘違い が広まっている可能性があります。 本書では、 その致命的な勘違いを明らかにし、思い込みを捨てて世の中を見るようにしよう ということが語られています。

ところで、みんなAを選んだにもかかわらず、実際の答えはどちらもCでした。なんか意外かもしれませんが、「社会は思っているよりも悪くない」と言っているように聞こえませんか? 社会には、みんなが思っているほど酷くない部分がたくさんある。みんなが思っているより良くなっている部分がたくさんある。 ということは、本書の重要なテーマの1つなのです。 「世界について知らなさすぎる」と言われて、何か厳しい現実を突きつけられそう・・・と思ったかもしれませんが、本書で語られる「現実」は癒される/穏やかなものが結構多いです。

データを使ってものを見る

「データを元に世界を正しく見る」と言った時のデータとは、今流行のビッグデータとか複雑な統計解析とかそういうのじゃないです。 どこぞのシンクタンクが取りまとめた、世界を操るデータみたいなのでもないです。普通に国連や世界銀行のような国際機関が取りまとめたデータのことです。

質問1の、低所得国に暮らす女子のうち初等教育を終了する割合を表すグラフはこちら。(たぶん。自分で調べたので)

質問9関連はこちら。すごいね。接種率が上がってるだけじゃなくて、ワクチンの種類も増えている。

ドル・ストリート

社会は思っているよりも悪くない。そうは言っても、実際に極度の貧困にある人はたくさんいるじゃないか!

まず、極度の貧困にある人は実際にたくさんいます。ですが、極度の貧困にある人だらけだというのは、事実に反しています。 世界には、 あなたより所得が低い人はたくさんいますが、絶対的な極度の貧困にある人だらけではありません。

自分より所得が低いのに極度の貧困ではない人の存在は認識されにくいのですが、世界で最も多いのは低所得者でもなく、高所得者でもなく、 中所得の人々 です。 このような中所得の人々の暮らしぶりを明らかにし、存在を認識し、理解するための便利な道具が ドル・ストリート です。(これは著者の息子夫婦が作ったみたい) www.gapminder.org

上の絞り込みのところで、適当にトピックを選んで、所得に応じた人々の暮らしぶりを比較してみましょう。 例えば、掃除道具で絞り込みをすると、低所得者高所得者まで、様々な所得の家族の掃除道具が表示されます。 低所得者はわらを束ねたようなボロボロのほうきを使っていて、高所得者はダイソンの掃除機を使っています。 一方で、真ん中2つの中所得者はブラシやバケツや洗剤を使っています。意外と悪くない!高級掃除機は使えないけれど、普通の暮らしに耐える道具を使っていることがわかります。

ドル・ストリートで、中所得者の暮らしを見てみましょう。そして、中所得者の存在を認識しましょう。世の中にいるのは、高所得者低所得者だけではありません。

知識不足の原因はなんだろう?

ドル・ストリートは、中所得者や中所得国の暮らしぶりを理解するために便利な道具ですが、 社会全体の知識不足の根本的な原因が気になります。 著者のハンス・ロスリング氏は、この原因は 人々が物事や世界をドラマチックに捉えてしまう本能 にあることを突き止めました。

10の本能

本書はイントロダクションと謝辞・あとがきをのぞいて11章あり、そのうち1〜10章は全てこの「10の本能」について、1つ1つ説明するのに当てられています。

目次でもわかることなので、ざっと並べてみます。

  1. 分断本能: 世界は分断されているという思い込み
  2. ネガティブ本能: 世界はどんどん悪くなっているという思い込み
  3. 直線本能: 世界の人口はひたすら増え続けるという思い込み
  4. 恐怖本能: 危険でないことを、恐ろしいことと考えてしまう思い込み
  5. 過大視本能: 目の前の数字が一番重要だという思い込み
  6. パターン化本能: ひとつの例が全てに当てはまるという思い込み
  7. 宿命本能: すべてはあらかじめ決まっているという思い込み
  8. 純化本能: 世界はひとつの切り口で理解できるという思い込み
  9. 犯人探し本能: 誰かを責めれば物事は解決するという思い込み
  10. 焦り本能: 今すぐ手を打たないと大変なことになるという思い込み

本書では、これらの「10の本能」があるせいで人々は物事や世界をドラマチックに見てしまっているということを指摘し、これらの思い込みを捨てて正しく物事を見ようと言っています。 先ほど登場したドル・ストリートは、「世界は先進国と途上国で二極化している」という 誤ったものの見方 をやめようということで、分断本能のところで登場した道具でした。 本書では他の様々な本能についても、思い込みによるありがちな誤った世界の見方についてたくさん紹介されています。その1つ1つのエピソードは、世界を飛び回ってリアルな世界の現場を見てきたハンス・ロスリング氏が語っているので、リアリティや信頼感があります。

これは自分の意見ですが、陰謀論はこれらの本能を上手に刺激してくるものが多いように思います。いろいろ組み合わせたら即席でそれはそれは恐ろしい陰謀の出来上がりじゃないですかね。

この国は大多数の(´-ω-`)と、ごく少数の٩(ˊᗜˋ)وに分断されている。٩(ˊᗜˋ)وがあらゆる利益を独占し、その傾向は日に日に大きくなっている。全ては٩(ˊᗜˋ)وが悪い。いますぐ٩(ˊᗜˋ)وをこの国から追い出さないと大変なことになるぞ

読み方・おすすめポイント

ファクトフルネス

ファクトフルネスとは、データに基づき正しくものを見る見方のことです。先ほどの10の本能に対応して、その本能に対抗するための方法のことです。 本書の読み方という意味では、このファクトフルネスを肝に銘じて実践するのがいちばん本書を活用できたことになるのではないでしょうかね。 簡単なことではないです。

それを知って我々どうするの?

「データに基づき正しくものを見るということは、我々一般市民にとって重要なのでしょうか?ただの教養では?」 これに対するハンス・ロスリング氏の回答は本書の序盤に載っています。

カーナビは正しい地図情報を元に作られていて当たり前で、情報が間違っていたら、目的地にたどり着けません。 政治や経営者もそうで、元になる知識が正しくなければ、正しい政治判断や経営判断ができるはずがありません。 私たちが投票で政治家を選ぶ際や、購買行動とかを通じて企業を選ぶ際、あるいは議論をしたり、ニュースを見たり・・・する際に、元になる知識が誤っていたら、間違った判断を下してしまいます。 ですから、正しいものの見方・正しい知識は、単に教養ではなく実際上の関心事なのです。

世界は良くなっている、というのはただの慰めでは?

本書の話を私の家族にしたときに、私の家族が「世界は良くなっている、というのはただの慰めでは?」という疑問をぶつけてきました。

それに対する回答の1つは、前項で言ったように、誤った判断をしないために、正しい世界の見方を鍛えておく必要があるということでしょう。 世界はどんどん悪くなっていると固定的に考えてしまうと、今やっている施策が効いていたとしてもそのことに気づけず、今やっている施策は無駄だと誤って判断して施策をやめてしまうかもしれません。これは良くない。

あとは、やっぱりハンス・ロスリング氏が言っていることですが、何に恐れ何に希望を持てば良いかわかるようになる、取り越し苦労をしなくて済む、ということもあると思います。

その他個人的な感想

ファクトフルネスに従ってコロナ禍を見てみよう

あんまり迂闊なことを言えないのですが、本書で紹介されている10のファクトフルネスに従って、新型コロナウイルス感染症を取り巻く様々なニュースを眺めてみると、結構鍛えられるような気がします。

  • 日々の感染者数がどうとか、国の政策がどうとかはもちろん大事だけど、ネガティブ本能や焦り本能に囚われてはいないでしょうか?
  • 感染者数が増えていくのを、直線本能で見てはいないでしょうか?
  • 感染者数が一番大事な指標ですか?過大視していませんか?他に大切な指標はないですか?
  • 特定の人々を悪者扱いして、それさえいなければ感染症の流行がおさまると思っていませんか?

などなど。意識したいファクトフルネスは、「悪い状態であることと、良くなっていることは両立する」「悪いニュースの方が届きやすい」ということです。

人生や世界はドラマチックな物語ではない

「人生や世界はドラマチックな物語であることを人間は期待してしまうが、現実はそうではない」ということをメッセージとして持っている本に3冊出会いました。本書もその1つです。このことはまた別途書こうと思います。

奥付

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣
ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド 著
上杉周作、関美和 訳
2019年
日経BP

ちなみに私は本書をオーディオブック版(Audible)で聴きました。本書はまあまあ図があるので、どちらかというとオーディオブックに向かないタイプの本な気もしましたが、普通に聞くことができるレベルでした。図は付属資料・PDFとして、Audibleのアプリ内で見ることができます。車に乗っていたり、ジョギングしている際には本書は向いていないです。電車の中で聞いて、図画登場した時だけ画面を注視するという聴き方なら十分ありだと思います。

恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白

稲葉圭昭「恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白」は、北海道で銃器犯罪を取り締まっていた警察官である著者の自伝で、稲葉事件 を扱った本です。 日本で一番悪い奴ら というタイトルで映画化もされています。 著者は警察官なのですが、覚醒剤使用、覚醒剤営利目的所持、銃刀法違反の罪で2003年に有罪判決を受け、服役しているということが本書の冒頭で明かされます。 本書は、警察という組織の闇を告発する ために、稲葉氏が警察官としての半生を振り返る、という体で進みます。

なお、本書はややハードめな薬物取引・使用描写を含みます。

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銃・病原菌・鉄

銃・病原菌・鉄 は、アメリカの進化生物学者ジャレド・ダイアモンド氏が1995年に書いた、人類史の本です。ちょっと古いですが、今でも書店で普通に見かける人気の本です。 人類史の本といえば、圧倒的に人気になったサピエンス全史という本がありますが、雰囲気はあんな感じです。

本書のメインテーマは、 「歴史上、ヨーロッパ諸国がアフリカや南北アメリカを征服したのはなぜか?なぜその逆ではなかったのか?」 という質問に対する究極の答えを探るというものです。なるほど、その答えがタイトルの「銃・病原菌・鉄」なのね。と思ったかもしれませんが、そんな出オチみたいなタイトルつけません。本書が探求するのは、この質問に対する究極の答えです。「銃・病原菌・鉄をヨーロッパ諸国は持っていて、アフリカや南北アメリカは持っていなかったのはわかった。では、そうなったのはなぜなのか?」というのを、どんどん深掘りしていく本です。

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リーダブルコード より良いコードを書くためのシンプルで実践的なテクニック

リーダブルコード ―より良いコードを書くためのシンプルで実践的なテクニック(以下リーダブルコード)は、読みやすいコードを書くためのヒントを紹介したオライリーの名著です。2019年9月時点で23刷まで行っているベストセラー本です。 プログラムを書く際に気を付けるべきコメントの書き方・変数の付け方などの書式上の注意点から、うまく関数を切り分けてコード全体の見通しを良くする方法まで、たくさんのヒントが紹介されています。読みやすいコードはより良いコードだという信念をもって書かれていて、「それがなぜ良いコードなのか」も含めて良くわかる1冊です。

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